Resonance Lab. レポート

連載レポート④

進化する『VMD』vol.4

-リアル店舗における「飽きさせない仕掛けづくり」とは-

丸山 朋子

 店づくりを企画・提案していく中で、商品を魅力的に見せる『VMD(-ビジュアルマーチャンダイジング-以下VMD)』の存在が重要視されていることに着目し、レゾナンス・ラボでは2017 年より『VMD』についての知識、技術の深耕を進めている。必要なものはネットで買うことが今や当たり前になってきているなか、店舗も変化(進化)させていくことが必要だ。連載レポート②では「VP(-ビジュアルプレゼンテーション-以下VP)の進化」を取り上げた。ただ美しく並べるだけでなく「ここはいつも目新しいものが揃っている、いつ来ても面白いものがある」という表現が重視され、そのために「鮮度」「動き」「見ごたえ」「提案」を打ち出し、変化を加え続けることが重要であるとお伝えした。リアル店舗にとって、『進化型VP』の「飽きさせない仕掛けづくり」はファンづくりにもつながる。今回は、この「飽きさせない仕掛けづくり」を深掘りしていきたい。

 

■リアル店舗こそ必要とされる『進化型VP』とは

旧型VP、進化型VP

 未だに『VMD』は「ディスプレイする人」と認識されることも多い。もちろん、「ディスプレイ」は『VMD』の中に包括されるが(「進化する『VMD』vol.1」にディスプレイとの関係性を記載)、「ディスプレイ」は「マーチャンダイジングをビジュアルで表現」するための手段にすぎない。重要なのは、「マーチャンダイジングに沿った、飽きさせない仕掛けづくり」である。昨今では、EC などのチャネルが普及し、以前の『VMD』の基本であった「美しさ」「見やすさ」「買いやすさ」「選びやすさ」だけでは、リアル店舗の強みが出せず陳腐化が進む。事実、このようなお店が増えている。ただモノを売るだけの場所からの脱却には、リアル店舗だからこそ重要とされる『進化型VP』(「進化する『VMD』vol.2」参照)づくりを丁寧に行うことが必要だ。『進化型VP』づくりはとても手間がかかる。一朝一夕では出来上がらず、「綿密なプランニング」、「実行」、「監督」を繰り返すことが重要だ。以降この流れを詳しくお伝えする。

※1【マーチャンダイジング(MD)-Merchandising-】:
商品政策、商品化計画のこと。メーカーでは製品計画、製品開発、製品管理のこと。消費者動向、商品動向、競合他社動向を把握し、適品を適時適量適所適価で揃えることが理想。一般的にはマーケティングの中に含まれる概念。

出典:VMD 用語辞典

1.「プランニング」:マーチャンダイジングを反映

進化型VP1「プランニング」

 この「プランニング」は、シーズン毎のマーチャンダイジングを反映し、プロモーションや販促と連動することで、より発信力の高い『進化型VP』を作ることができる。店舗開発などの店舗を作る担当や店舗の設計者は、この「プランニング」を理解し、より見栄えよく見える内装、什器、備品を考え揃える必要がある。

2.「実行」:現場指導と自発的な鮮度維持の促進

進化型VP2「実行」

 ここでのポイントは、「プランニング」に基づいた『進化型VP』を店舗スタッフと一緒に作業することだ。店舗側(店長・スタッフ)にとって、「鮮度を保つ」ことが以後毎日の重要な任務となり、ここが連動しないと結果、店舗の陳腐化につながる。店舗側(店長・スタッフ)にもマーチャンダイジングが浸透すると、店舗が生き生きとした魅力を持ち、スタッフの販売力も高まる。

3.「監督」:各店への浸透と立地特性の反映

 各店へも「プランニング」が浸透するように監督することが重要となる。ここで間違えてはいけないのは、店舗すべてを統一することが目的ではない。本社で立てたマーチャンダイジングと、エリアなどの特性を加味した変化を加えることが次のステップとなる(店舗MD 計画)。店長やスタッフがマーチャンダイジングを理解し、それぞれの店で特徴がでてくると、より印象的な店舗を作ることができる。

進化型VP3「監督」

 店舗を潤滑に運営していくには、商品と店舗をつなぐだけでなく、関係者の間もつなぐことが『VMD』担当者に求められる力量だ。各担当者とともに「プランニング」し、店舗のスタッフまでマーチャンダイジングが浸透すると、頭の天辺からつまさきまで血が通った力強い店舗が出来上がる。

 

■リアル店舗における『進化型VP』実践編

 『進化型VP』づくりには、ビジュアル訴求が強く、インパクトのあるアイキャッチが求められる。マネキンやプロップスなどを効果的に使用したテクニックの一部を海外の事例写真とともに紹介する。『「クロス」と「対比」』の手法と、『「インパクト」と「誇張」』の手法を勉強したい。明日からでも使えるテクニックだ。

※2【プロップス-props-】:
Property の略。演出効果を高めるために用いる小物、道具、家具類などこ
まごましたものを差す。

出典:VMD 用語辞典

■「クロス」と「対比」

【基本構成】

 2 体のマネキンには、「クロス」の位置に“同じもの” を配置することで「対比」を作るとインパクトが増す。(マネキン2体にバラバラの服や雑貨で構成すると訴求力がなくなり、アイキャッチにはならない。) マーチャンダイジングで打ち出したい商品がバラバラのデザインだったとしても、上手に色、素材、丈、のバランスをコントロールして訴求力を高めることが必要だ。

 

 

クロスと対比基本構成

【連続での「対比」】

 基本構成から応用した『連続での「対比」』の作り方を(図2)に示す。

クロスと対比連続での対比
pedderonscotts@シンガポール帽子コーナー靴コーナー

Pedder On Scotts@シンガポール

帽子コーナー/靴コーナー

■「インパクト」と「誇張」

 簡単にインパクトが演出できる「パネル型」プロップスは有能だ。近年この手法が増加しているのは、安価な製作コストでオリジナル性を表現できるからだ。わかりやすいアイキャッチづくりに最適といえる。さらに、「誇張」の手法を紹介する。

lanecrawford@香港

Lane Crawford@香港

■特別なものに変化させる魔法の力

 この『進化型VP』により、お客様へ“強く印象付け” することができる。EC など、ただ単純に商品を並べているものでは沸き起こらない感覚が生まれ、商品が“特別なもの” へ変化する。『VMD』には、商品を特別なものに変化させる“魔法の力” がある。手に取った商品に愛着を感じ、購入し、使用し続ける(商品と長い年月を過ごす)ことでライフスタイルにも変化が生まれる。商品と店舗をつなぐだけでなく、商品とお客様をつなぐ『VMD』。レゾナンス・ラボでは今後も注目、研究していきたい。

萌えちゃんねる Vol.009

たまにはワクワクを買いたい

どこで買っても同じものだったらなるべく安く買いたい。とはいえ、ネットの方が安く買えるものをわざわざ実店舗で買ってしまう日もある。それは「今すぐ自分のものにしたい」という気持ちが節約心に勝ったとき。安くもないのに買うときはなにかきっかけがほしい。「今買わないでどうするの!」と思わせるシズル感のあるVP に気持ちを踊らされて、買い物帰りの道中ワクワクが続くなら、楽しい気持ちの演出料にお金を払ってもいいのかもしれない。まあ、毎日踊らされるわけじゃないけど。

図はすべてレゾナンス・ラボにて作成

写真はすべて筆者撮影による

連載レポートはこちら

【連載レポート③】進化する『VMD』

【連載レポート③】進化する『VMD』

-『VMD』も参加型、体験型で楽しむことにシフト。視察研究 in NY より (2017 年冬 )- 読む 【連載レポート③】進化する『VMD』

【連載レポート①】進化する『VMD』

【連載レポート①】進化する『VMD』

-商品と店舗空間の間をつなぎビジュアルに直接訴える『VMD』を追う- 読む 【連載レポート①】進化する『VMD』

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