Resonance Lab. レポート

マーケットの動き

変革するスポーツビジネス Vol.2

15 兆円のポテンシャルと商業参入のチャンス到来

丸山 朋子

 日本におけるスポーツビジネスには15 兆円のマーケットの可能性があるという。全体として縮小傾向にある日本のマーケットにおいて、2019 年の国内IT 市場規模の18 兆円(※1)と対比しても、大きなポテンシャルがある市場が現れたといってもよいのではないか。実はこれまでスポーツビジネスの市場規模は不明瞭だった。しかし、政府から2015 年度のスポーツ市場の規模が5.5 兆円と明らかにされたと同時に、2025 年までにその規模を約3倍の15 兆円にする目標が立てられた。国をあげてのスポーツビジネス成長のタイミングがまさに今訪れている。
 本号では、スポーツビジネスにおける商業参入のチャンスとその理由、そして可能性を紐解いていき、引き続き次号でも、「スポーツビジネス」に着目し、生活者にとっての健康、フィットネス、さらにはスポーツ、プロスポーツへの関心の高まりなど、スポーツ関連へのマインドの変化も併せて考えてみる。この一大ブームの波に乗れるよう我々もしっかりと準備をしておきたい。

※1:2019.2.27 IDC.Japan『国内IT サービス市場予測』による

■(可能性1)これまでの未成熟な「スポーツビジネス」からの脱却

 アメリカではスポーツ産業は60兆円のマーケットがあり、日本とはマインドも構造も大きく異なる。しかしそのことは、今後の日本でも爆発的に伸びる余地があるともいえる。森貴信著の『スポーツビジネス15兆円時代の到来』を参考にスポーツがビジネス化されてこなかった背景を探ってみる。

古くからの「教育」的マインド

明治政府の方針であった「富国強兵」からスタートし心身ともに健康な兵隊予備軍を
作り出すための「教育」が始まりであり2015 年までは「文部科学省」が管轄
(2015 年に文部科学省の外局としてスポーツ庁が設立)
※実は世界的にみるとかなり珍しい

 

 

深層心理で根付いていない

もともとのスポーツの語源でもある
「楽しむ」や「遊ぶ」といった概念が
日本では深層に根付いていない

スポーツでお金を稼ぐのは悪である

教育的側面により「スポーツでお金を
稼ぐのは悪いこと」という前提が
心の中に埋め込まれてきた

[1] 競技施設の未成熟

① 競技場・体育館が地方自治体の所有・運営

収入面の手立てはなく維持費が収入を上回ってる状態が多数。地方自治体が所有・運営のため、さまざまな規制がかかる。

② 観客向け施設開発の未実施(周辺施設含む)

日本は「競技者」のためのスタジアムに対し、欧米では「観客」のためのスタジアムづくり。競技場、体育館は選手用に作られているため、一般的な観戦用のスペースはほとんどない。

[2] クラブマネジメント( 経営) 力の欠落

① ボランティアによる指導

「部活動」や「地域のスポーツクラブ」のコーチや顧問はスポーツ指導を専門的に学んだことのない人による報酬のない「ボランティア活動」がほとんど。

② チーム経営ノウハウの未獲得

経営層は親会社若しくは責任企業からのスポーツビジネス経営を知らない出向者が多数。本人の意図とは別に、チームになじめずチームの士気も下がる。

競技場・体育館(アリーナ・スタジアム)は民間企業が所有・運営し、スポーツ組織のトップには、
スポーツビジネスの専門家や別ビジネスの経営経験がある「プロ経営者」を据える必要がある。

古くからの「教育」的マインドと「スポーツのビジネス化」は相性が悪い。しかし、利益を生む経営へ変化できれば、
プレイヤーや指導者への報酬も上がり、結果としてチームが強くなる。

 

森貴信著の『スポーツビジネス15 兆円時代の到来』をレゾナンス・ラボにて抜粋・編集

 

■(可能性2)政府の成長戦略としての注力

 2016 年、第二次安倍内閣による成長戦略『日本再興戦略2016 版』の骨子に「スポーツの成長産業化」が制定された。2019 年ラグビーワールドカップ、2020 年東京オリンピック・パラリンピック、2021 年ワールドマスターズゲームズ、このようなスポーツのメガイベントが3年連続で同一国で開催されるというのは、今回日本が初めてのことである。市場拡大に向けた千載一遇の大チャンスに国をあげて変革の時期が訪れている。

『 日本再興戦略 2016版』 より(4)スポーツの成長産業化 スポーツ産業の未来開拓 該当箇所を抜粋

(1) KPI 進捗

日本再興戦略2016、スポーツの成長産業化、スポーツ産業の未来開拓、KPI進捗

(2) 新たに講ずべき具体的施策

日本再興戦略2016、スポーツの成長産業化、スポーツ産業の未来開拓、新たに講ずべき具体的施策

(参考 ) スポーツ市場規模 ( 試算 ) の内訳 (平成 30年 3月スポーツ庁『新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向』より抜粋)

スポーツ市場規模 ( 試算 ) の内訳、平成 30年 3月スポーツ庁、新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向

※2 株式会社日本政策投資銀行『2020 年を契機としたスポーツ産業の発展可能性および企業によるスポーツ支援』(2015 年5 月発表)に基づく2012 年時点の値。

【各改革の試算に含まれる主な業種】
・スタジアム改革:施設 ・アマチュア改革興行(大学スポーツ)
・プロ改革:興行 ・ IOT 改革:その他(ソフト投資として計上)
・スポーツ用品改革:小売 ・周辺産業改革:スポーツ関係の雑誌・放送・新聞、旅行等
(スポーツ市場規模試算(EY 総合研究所)を基に作成)

 

(単位:兆円)

■商業参入のチャンス到来

 上記を踏まえると今まさに「競技施設づくりの変革期」が訪れている。昨今の動きでは、スポンサー広島カープの本拠地であるMAZUDA zoom-zoom スタジアム広島球場は、2008年には運営を㈱広島東洋カープへ移行し、2009 年の球場新設の際「観客のための施設計画」を実現。2016 年~ 2018 年までセ・リーグ3連覇、新球場ができるまで60 ~ 70 億円だった売上高も、2017 年には188 億円へと成長を遂げた。横浜DeNA ベイスターズも球場運営の㈱横浜スタジアムが2015 年のTOB を経て㈱ディー・エヌ・エーの連結子会社となったことで大きく好転した。前号のレポートで取り上げたいわきFCは東北社会人1部リーグでも優勝を果たすなど、球団スポンサーとスタジアム・アリーナの運営一本化と、観客目線の競技施設づくりはチームの成績にも大きく影響を与える。2023 年、北海道日本ハムファイターズが北広島市に計画する「ボールパーク構想」、2024 年V・ファーレン長崎が長崎市に計画するホテルオフィスと一体化した「スタジアムシティ」など、民間企業が主体となり地元を巻き込んだ“観客も楽しめる街づくり型スタジアム” に胸が躍るのは、今までのスポーツの歴史が変わる風を感じるからだろう。“商業参入のチャンス到来”だ。

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"変革するスポーツビジネス"シリーズ

【ココカラ】変革するスポーツビジネス Vol.1

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-スポーツと商業を融合させた『いわきFC パーク』のフラットな場所づくり 読む 【ココカラ】変革するスポーツビジネス Vol.1

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