Resonance Lab. レポート

明日のターゲット

変革するスポーツビジネス Vol.3

生活者のマインド変化と『筋肉女子』から生まれるビジネスチャンス

伏見 百代

 前号では、スポーツにおける歴史的背景とビジネス成長の可能性について考察した。では、私たちの肌感覚におけるイメージの変化について考えるとどうだろうか。世の中が大きく変化し、健康志向や身体を整えたり鍛えたりすることが日常的になっている今、スポーツに対して抱くイメージも変化しているはずだ。本号では、生活者の目線からスポーツ関係者とは違った切り口で、その変化を丁寧に紐解いてみる。

■スポーツは「エンタメ」から「たしなみ」に

 「スポーツ」という言葉の語源はラテン語で「気晴らし、楽しみ、遊ぶ」などの意味を持つ「deportare(デポルターレ)」であると言われている。現在では「スポーツ」という言葉は、

 A. 競技
 B. 身体を動かす、楽しむ

の二種類の意味で主に使われている。
 数年前まで「スポーツ」といえば『A. 競技』のイメージが強く、自分とは遠い存在で観戦するだけのエンタメのひとつだった。それが近年のスポーツビジネスの成長産業化の影響と、[図‐1]であげている4 つの要因により、スポーツに対する心理的距離は近づいてきている。要因①や②のファッションや美容分野のトレンドへの参入から始まり、③ライフスタイルの変化、さらに④のようにSNS で目に触れる機会が増えたことが要因と考えられる。これまで別物とされてきた他分野との融合がより深化し、身近になってきている。専門度の高いスポーツの知識や技術が徐々に日常化することで、『B. 身体を動かす、楽しむ』といった要素も「スポーツ」として意識するようになったのではないか。スポーツに対するイメージは遠い存在から、日常的で身近なものへと幅を広げている
 さらにこの変化にいち早く反応し、スポーツをライフスタイルの一部として取り込む層が出現している([図‐2]「新たな価値観誕生」の矢印を参照)。健康志向が一般化したことで、さらにスポーツは生活者にとって当たり前の「たしなみ」のひとつとなりつつある。

たしなみ【嗜み】・・・心得、心がけ、用意、慎み などの意味
(広辞苑 第六版より抜粋)

■新たなジャンル『筋肉女子』の誕生

 スポーツを「たしなみ」化する先駆けとして、『筋肉女子』と呼ばれる女性層が登場している。[データ-1]を見ると、すでに様々なメディアで存在感を示し、注目度の高さを見て取ることができる。
 [データ-2]の『露出する女子、覗き見る女子』(筑摩書房三浦 展/ 天笠 邦一 著)によれば、身体を鍛えることが好きでそれを職業にしたいと考える『ボディ系(筋肉女子も含まれる)』は、これまでの市場にはいなかった新ジャンルであるとされる。Ⅱ.【20~39 歳のなりたい職業分野】ではボディ系は7位であるが、まとまったボリュームとして新たな分類を形成している。その性格はⅠ.【ボディ系の特徴】に見られるように、近年では珍しく向上心や意思が強く積極的なタイプだ。
 『ボディ系(筋肉女子)』の登場は、スポーツビジネスの市場拡大による影響とも読み取れる。ビジネスが成長すればそれを支える雇用が生まれるなど、スポーツビジネスは裾野を広げている。

■まとめ

 3号に渡りスポーツビジネスの変革を探ってきた。4月と8月に行われた㈱ナイキジャパン主催のイベント『TOKYO AFTERDARK』や、5 月に渋谷ストリームの広場で行われたバスケイベント『SHIBUYA 3x3 フェスティバル』など、街中でも気軽にスポーツを楽しむイベントの盛り上がりが目立つ。今までであれば自分には関係ないと決め付け通り過ぎてしまっていたものも、つい足を止めて見入ってしまう。
 スポーツビジネスも生活者の価値観も、双方が今まさに大きく変化している。その相乗効果によって世の中に起きている大きな変革の流れをつかまえる必要がある。商業施設とスポーツビジネスはとても親和性が高い。生活者の価値観に沿ったスポーツ融合型の施設の在り方について、引き続き注目していきたい。

"変革するスポーツビジネス"シリーズ

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