Resonance Lab. レポート
マーケットの動き
『エックスプレイス』の広がり
移動の変化から見る商業の可能性
丸山 朋子
本号も前号に引き続き、ポストコロナについて想定できる変化を考察をしていく。2 回目は「移動のこれから」について。リモートワークや時差通勤が推奨され、毎日満員電車に乗る生活スタイルは大きく変化した。コロナ収束にはかなりの時間がかかると予測される中、リモートワークを上手に取り入れた効率的な働き方が全世界的に広がっていくとともに、“移動” 自体にも大きな変化が起こることが予想される。本号では、「移動の変化」から紐解いた考察をお伝えしようと思う。
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■ 価値観に合わせた住み方・働き方の選択へ
リモートワークが広がったことで、自宅と仕事場を併用することとなり、模様替えや仕事部屋のある住居への引っ越しなど、自宅でも快適に仕事ができる環境を整えたいという欲求が生まれている人も多いはずだ。前号でお伝えした複合的な災害に見舞われる可能性も考慮すると、修繕費や保険料の備えに対する費用高懸念も重なり、定住・持ち家の所有欲にも変化が表れてくる。これまで住む場所の選択は職場への通勤立地を考慮し選択肢は限られていたが、これからは田舎で自然とともに心豊かに過ごしながら、平行して今の仕事を継続できる暮らしの実現も夢ではなくなってきた。
職場立地に左右されず、「住み方・働き方、住む場所・働く場所」の選択が個人の価値観で実現できる時代へ
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■ 田舎と都心部の両輪生活の実現
例えば、「田舎暮らし」を主軸としながら、必要時のみ都心部へ拠点を移す生活など、仕事状況、家庭状況に応じて拠点を選択するスタイルが進んだ世界を考えてみる。この生活拠点を“複数” 持つことが一般化することにより、広がるサービスも出てくるだろう。例えば、都心部での仕事ではホテルに宿泊(現在の出張者のように)していたが、自分の望むときだけ住宅が借りられる定額住宅サービス=「住宅サブスクサービス」(例:月10 日ほどで定額利用)の登場により選択の幅が広がるだろう。さらに、その拠点毎に全国でシェアオフィスが利用できる「シェアオフィスサブスク」が整うなど、複数拠点で生活を豊かにするものが広がってくる。自由度のある暮らしにフィットしたサービスが今後成長していくことが期待される。

■ 複数拠点に合わせたエックスプレイスの広がり
複数拠点生活で重要となるのが『X place(エックスプレイス)』という存在だ。4 月の号外で価値観の変化④「目的に合わせた居場所の多拠点化‐サードプレイスからエックスプレイスへ‐」の中で触れたように、これまで「サードプレイス」が担ってきた居場所機能は今後複数化した拠点それぞれで存在することとなる。目的やキブンに合わせた使い方ができる居場所として、サード(3 つ目)から、より多数の居場所としてエックス(X)まで膨らむと考え、『X place(エックスプレイス)』と名付けた。つまり、田舎の自宅近所でリモート会議に利用できる場所、息抜きに訪れる場所、都心部で客先ともミーティングがしやすいワークスペース、刺激をもらえるコミュニティカフェ、といったように、それぞれの拠点で様々な目的に合わせた居場所が必要とされる。左下の図1を参照していただくと模式的にわかりやすい。拠点に合わせて複数の『X place(エックスプレイス)』が存在するということである。図2ではさらに深掘りして考えてみる。移動生活をメインにした「とある1 週間の生活」を想定すると、これからの暮らしにフィットした商業のヒントが見えてくる。
これは遠い未来のストーリーではない。すぐ間近に見える未来だからこそこの変化のひとつひとつを大事に読み取っていくことが重要だと考えている。


ポストコロナについて想定できる考察レポート
【マーケットの動き】

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