2023.07.18

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森に溶け込み、“水の旅”を体感できるブランド体験施設

2022年5月に開業した「サントリー天然水北アルプス信濃の森工場」は、「サントリー天然水」の製造過程を楽しく学び、五感を通してその魅力を感じられるブランド体験施設です。水になった気持ちを体感できるウォーターシアターや、普段見ることができない製造ラインなど、インタラクティブなコンテンツとともに、天然水にまつわるストーリーを体験できます。

施設を構える長野県大町市は、3,000メートル級の北アルプスの眺望の美しさでも知られ、豊かな自然に囲まれており、清冽なおいしさを価値とする「サントリー天然水」にとって理想的な場所です。

今回は「サントリー天然水」の“水の旅”を体験できる展示施設づくりに、〈企画・ディレクション・コンテンツ制作〉株式会社サン・アド、〈デザイン・設計・施工〉株式会社船場、〈体験型コンテンツ〉株式会社NORAの3社で協力させていただきました。

Concept  「未来へ続く物語」

 

我々は、工場の背景や、見学ストーリーを考えるコンセプト段階からプロジェクトに参画しました。この地で長い間育まれてきた“水”は、動物、虫、大町の人々をつなぐ存在です。「すべての生き物が水とつながっていること」に改めて気づき、水に感謝し、自然と共に生きる喜びを知ることで、未来を想うようになってもらいたいという願いから、「未来へ続く物語」をコンセプトにしました。

また、本工場ではCO₂排出量実質ゼロの水づくりを実現しています。ブランド体験施設では、ずっと未来へ続いていくサステナブルな工場であることを伝えることも重要なポイントでした。体験コンテンツでは、「未来の子どもたちも同じようにおいしい天然水を飲んでほしい」という、工場に関わる人の想いが届くようにデザインしました。

Realization コンセプトの実現

ここから実際の設計やコンテンツ制作を行った過程をご紹介します。「未来へ続く物語」を来場者にどう伝えるか、各エリアの体験はどうあるべきか、我々は常にコンセプトに立ち返り、どのようなデザインや設計がベストか反芻しながら完成へと近づいていきました。

1.乳川テラス


エントランスから体験施設までむかう道のりでは、北アルプスの雪解け水が流れる乳川を望むことができます。

道の途中にウッドデッキのテラスを配置することで、天然水を育む大町の無垢で壮大な自然を感じられるように計画しました。


2.青のトンネル


青のトンネルは日常から非日常に切り替わる重要なエリアです。

単純な照明演出ではなく、没入感を出すことや、ブルーの色合いの変化を自然に近い表現にすることを意識し、照明の感覚や機材加工によって来場者の心理的変化を促す演出を施しました。


3.緑の散歩道


緑の散歩道は、非日常へ切り替わって自然の世界に入っていくエリアです。

所々に設置している銀鏡ベンチには、木々や空の風景が映り込みます。来場者は映り込む木々の姿に気づいて、自然と上を見上げ、より自然を身近に感じることで、五感を研ぎ澄ましていきます。


4.天然水ハウス


自然と距離を縮めたあとで出会う天然水ハウス。

山の稜線を壁面にあしらい、建物の中に入ってもなお、自然の中にいる気持ちを味わえるようにデザインしました。ここでは、ものづくりへのこだわりを知ってもらい、天然水ができる工程を楽しく学ぶことができます。


自由に動画を再生できる水滴の形のボタンや、回すことで森づくりの流れを体感できるハンドル、実際にペットボトルをリサイクルに出せるポスト等、自分でコンテンツを動かす仕掛けを散りばめています。

動画では、雨水が地面に浸透していき、20年後に工場でくみ上げられる様子を見ることができます。ショップではオリジナルグッズの販売も行っています。


5.ものづくり棟

5-1 WATER THEATER

ウォーターシアターでは、まるで自分が雨粒の一つになったかのような映像体験ができます。
海から天に登り山に降り注ぎ、地層深くに染み込み、磨かれていく20年の水の旅を表現しました。

映像コンテンツでは、6Kの実写映像を盛り込み、高い解像度で没入感やリアリティを追求しました。特に、朝霧のシーンの撮影は気象条件が厳しく、何度も現地に足を運び撮影を重ねました。また、実際の地形や地層のデータを反映させたCGも取り入れ、地表や雨粒の表現、水のしみ込み方など、細部にわたり細かく作り込んでいます。


5-2 展示通路


展示通路は、ラベルを巻くローラーやペットボトルの型枠など、実際の工場で使われている部材を使用することで、ここでしか見られない展示になるように設計しています。

山のジオラマでも、本物に近くなるよう、石の材質にこだわり、特に地層部分は、有識者にヒアリングを重ねて創り上げました。

工場の中の様子を窓から覗くことができるコックピット室。普段見ることができない工場内の映像を自分で切り替えられるモニターを用意しました。

切り替えた映像のひとつにはコックピット室で操作している自分たちを映し出すカメラを用意しており、自分も工場の一部にいることを実感してもらう仕掛けとしています。


5-3 展示テラス


展望テラスは、雄大な自然を眺められる場所です。テラスには水滴をモチーフにした椅子を散りばめ、長野の地場木材である「赤松」で制作した子供用の机と椅子も用意しました。

また、山々が見られる展望の良いテラスで水のおいしさを実感してほしいという想いから、特注の天然水クーラーを設置し、実際に工場でつくられた天然水を味わえる場所にしました。


6.みずのわ広場


みずのわ広場は餓鬼岳が見渡せる、自然を感じられるフォトスポットです。

ここでは現地の花崗岩を活かして、自然の石をベンチとして使用しています。設置する花崗岩は、ひとつずつ座り心地を確かめながら決めました。


7.みずのわカフェ


雄大な自然を眺めながらひと休みできる「みずのわカフェ」。地元の食材や天然水を使用したフードとドリンクの提供を行っています。

「みずのわカフェ」のロゴは「地元・サントリー・お客様」の3つの輪の重なり、湧き出る水、広がる波紋、俯瞰した山などのイメージを象徴しています。


Epilogue エピローグ

大自然に囲まれた「サントリー北アルプス信濃の森工場」を訪れた方々が、すべての生き物とつながっている水の価値に気づき、自然と共に生きる喜びを感じてもらえるようにデザインしました。日常生活の中でふとサントリー天然水を手に取って、「ごくっ」と飲んだ時、ここでの気づきや体験を思い返してもらえたら幸いです。

サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場

●所在地
〒398-0004
長野県大町市常盤8071-1

●営業時間
9:30~16:30(最終入場15:30)  

●休業日
月・火、工場休業日
(臨時休業有り)
冬季休業:1~3月・12月    

Project Credits

株式会社サン・アド
企画・ディレクション・コンテンツ制作
https://sun-ad.co.jp

株式会社船場
内装設計、内装施工
https://www.semba1008.co.jp

株式会社NORA
コンテンツ制作・機材オペレーションシステム設計・機材設置調整
https://noraagency.tokyo


写真:Shinichi Sato


サントリー天然水北アルプス信濃の森工場についてはこちら

船場 実績紹介ページはこちら

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