マーケットの動き

世の中の“Beyond”を探る!

レゾラボ注目TOPICS 2022

 昨年12月に開催したウェビナー【TABLOID#05 Air ビヨンドジェンダーマーケット】では、これまでの常識や固定概念を“超える”=“Beyond”する価値観を大きなテーマに取り上げた。ウェビナーではジェンダーについて詳しく考察したが、その価値観は性差以外にもあらゆる場面で台頭し始めている。空間の考え方においてもそれは表れ、リアル空間の在り方は大きな変化の時を迎えている。

 今号ではレゾナンス・ラボが今注目する先をピックアップし、それぞれの“Beyond”の切り口から紹介したい。

【Beyond リアル↔バーチャル】D2C が体験・体感できる空間

 昨今、D2C商品のマーケットは加速度的に膨れ上がっており、リアルへの出店も増えてきた。ネット販売が主のD2Cという新ジャンルが臨むリアル空間の使い方は、より広告的だ。気軽にしかも安価で購入できる反面、商品を直接手に取りずらいという課題があったが、D2C商品を集めてショールーミング型としている下記の例のように、「D2C×ショールーミングストア」は相性がよい。リアルとバーチャルの境を感じさせない店舗や買い物はさらに進化していくことが予想される。

※D2Cとは:Direct to Consumerの略で、自ら企画、生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法。

2021年9月に西武渋谷店にオープンしたメディア型OMO店舗『CHOOSEBASE SHIBUYA』は、D2Cブランドを中心にファッション・コスメ・雑貨・食品までデジタルに強い商品を揃えている。スマホで商品説明を確認し、購入はQRコードを読み込んで専用サイトに飛ぶため、商品を手に持って店内を歩くこともない。

写真:筆者撮影

 

2021年12月に代官山にオープンしたD2Cの試食専門店『メグダイ』は、「試食×ショールーミング」型で、試飲・試食を無料提供する。

【Beyond 作る↔売る】メーカー直営のブランド発信拠点

 メーカーがブランド発信拠点として店舗を直営する流れも増えている。販売店を介さず、メーカー自身が直接ブランドの世界観を正確に伝えるリアル空間の存在。フラッグシップショップという機能だけでなく、その周りで起こる体験まで一緒に提供することもリアル空間ならではだ。

2021年12月にオープンした『バーミキュラハウス 代官山』は、レストラン・デリカテッセン・料理教室・ライブラリー・コーヒースタンドの機能を持つ。名古屋発のバーミキュラは2019年に体験型複合施設『バーミキュラ ビレッジ』を名古屋で開業し、アメリカ・アジアに向けたグローバル企業への一歩として代官山へフラッグシップショップを出店。

写真:バーミキュラハウス公式Instagramより

(@vermicular_house)

【Beyond 接客↔コミュニケーション】無人販売でブランドイメージを体現

 街中で増えている専門の自動販売機や無人店舗など、人との接触を避ける生活の中でテクノロジーとの融合が進化している。これまでは利便性は高くても味気ない印象が強かったが、下記のような体験型やブランドイメージを伝える店舗が増えている。ブランドを体現するリアル空間として、効率よりもブランドストーリーを伝えることを重視し、店自体がアイデンティティを物語る新しい場づくりに注目だ。

(左)2021年12月から期間限定で渋谷スクランブルスクエアに出店している『BLUE BOTTLE COFFEE Pop Up Cafe – Shibuya – 』は、「美味しいコーヒーをシームレスに受け取ることができるカフェ」をコンセプトに、ロッカー式のポップアップカフェをブランドとして世界で初めて設置。

写真:bluebottlecoffee公式HPより

(右)2021年5月に恵比寿にオープンした進化系ホルモン専門店『ホルモンショップnaizoo』の無人店舗では、お弁当・冷凍食品・生ホルモン・スイーツ・アルコールドリンク・アパレルグッズもセルフサービスで販売。

写真:naizooリリースより

【Beyond 所属↔フリー】進化型シェアスペース

 シェアスペースが生活に馴染み、その時の用途や気分に合わせた使い方が広がったことにより、それぞれに利便性や快適さが向上し、細分化されてきている。オンオフ共に「居てもいい」居場所となる『エックスプレイス(2020年6月配信レポート【『エックスプレイス』の広がり】参照)』の存在は、広告的・体験的需要が増えるリアル空間の中でも重要な要素だ。

蔦屋書店、TSUTAYAが展開するシェアラウンジは、個室ブースや会議室、食べ飲み放題のCafé&Bar、ブックライブラリーを併設。今後、首都圏に100のSHARE LOUNGEを展開する方針を掲げる。

写真:TSUTAYA公式HPより

【Beyond 街づくり 行政↔民間】エシカルな地方創生

 地方創生のための街づくりプロジェクトは、様々な業界を横断して行政・企業・地域産業が連携を強めて動きが大きく広がっている。下記の『VISON』では、レゾラボでも着目するエシカルな要素が、丁寧に持続的に組み込まれている。街づくり規模の開発としては、2019年10月配信レポート【変革するスポーツビジネス Vol.2】で取り上げた日本ハムファイターズの『北海道ボールパーク』。BIG BOSSの新庄氏などスポーツと興行、街を巻き込む力は、アフターコロナでの活性化の起爆剤として期待が高まる。

2021年7月に三重県にグランドオープンした商業リゾート施設『VISON』は、ショップ・飲食・ホテル・温浴施設・産直市場・体験施設・薬草園・農場を備える地方創生プロジェクト。林業を支える取り組みや、地域の雇用創出、店舗と協力した地産地消などの経済効果を目指す。施設での体験を通じてSDGs活動に貢献を推進。地域課題を解決するためのスーパーシティ特区構想として、体験や実績を連携する周辺の6市町に展開することで地域活性化、未来社会の先行実現を目指すとしている。

写真:VISON公式HPより

2022年も“Beyond”に期待!

 レゾナンス・ラボが今年も継続して注目するテーマとして“Beyond”を切り口にトピックスを紹介した。リアル空間においても、それぞれにこれまでの分野やルート、固定されたイメージなどの壁を壊す動きが見て取れる。八王子の物流を組み込んだ商業施設計画など、「モノ」と「お金」が交差するだけの場所から脱却の時を迎えている。さらにAppleやSONYのEV事業への参入のように、これまでの業界の範囲を超える動きも目立つ。まさに“Beyond”の動きが活発だ。

 身近なところではプロ↔アマの境も薄くなってきている。住宅のセルフリノベーションといった専門性が高い分野のセルフ市場や、何かを始める際にyoutube動画をチェックすることが広がっている。自身で一度試したうえで、インフルエンサーのようなセミプロ的存在に信頼を置く人や、より専門性を高めたい人などのように、物事の過程にも選択の幅が広がっている。街づくりから生活スタイルまで、あらゆる場面で選択肢が多様化されていく中、今回ピックアップしたようなリアル空間でも変化の兆しが見える。レゾラボでは今年も引き続き、生活者の目線から空間創造のこれからを考えていきたい。

文章:丸山 朋子 / 伏見 百代

関連記事

Resonance Lab.に戻る