Creation Palette YAE®

2025.01.22

三井化学の新たな共創空間『Creation Palette YAE®』の施工で見えた、次代の空間デザインへの船場の対応力

2024年10月、三井化学株式会社では、本社機能を置く東京ミッドタウン八重洲に『Creation Palette YAE®』を開設しました。三井化学グループの長期経営計画『VISION 2030』の取り組みの一環として作られたもので、グループのアセットをワンストップで紹介・体験ができます。それと同時に、社内外の様々なバックグラウンドを持つ人々が接点を作り、交流することでアイデアやビジネスの、パートナーシップの構築を目指す共創空間です

今回船場では、印象的な意匠をもつ『Creation Palette YAE®』の実施設計助成と施工を手がけました。その経緯や業務のポイント、成果について、プロジェクトに関わった3名のスタッフに話を聞きました。

2024年10月、三井化学株式会社では、本社機能を置く東京ミッドタウン八重洲に『Creation Palette YAE®』を開設しました。三井化学グループの長期経営計画『VISION 2030』の取り組みの一環として作られたもので、グループのアセットをワンストップで紹介・体験ができます。それと同時に、社内外の様々なバックグラウンドを持つ人々が接点を作り、交流することでアイデアやビジネスの、パートナーシップの構築を目指す共創空間です。今回船場では、印象的な意匠をもつ『Creation Palette YAE🄬』の実施設計助成と施工を手がけました。その経緯や業務のポイント、成果について、プロジェクトに関わった3名のスタッフに話を聞きました。


Project Member / プロジェクトメンバー

  • 上野 大樹

    上野 大樹

    (株)船場
    EAST事業本部
    統合戦略室

  • 斎藤 智哉

    斎藤 智哉

    (株)船場
    EAST事業本部
    EAST事業本部 総合設計Division4

  • 鈴木 克也

    鈴木 克也

    (株)船場
    EAST事業本部
    施工計画Division2

各業者のハブとなり施工現場の舵取りを担当

——『Creation Palette YAE®』において船場は実施設計助成と施工で関わり、設計デザインは別のデザイン会社が担当しました。その経緯を教えてください。

上野 本案件の企画やPMを担当した、 ロフトワーク様から相談をいただいたことがきっかけです。設計デザインを担当するアクソノメトリック様によるデザインを具現化するために力を貸してほしいとお話をいただきました。

——どの様な点が評価され今回の案件につながったのでしょうか。

上野 施工力はもちろんですが、我々は空間作りにおいて、企画からデザイン、設計、施工、メンテナンス対応まで一貫通貫で対応しています。プロジェクトのすべての流れを理解する会社としてご信頼をいただいていることが、今回の案件にもつながったのだろうと思います。

——今回のように設計デザインから一気通貫ではなく実施設計助成から参画するような場合、普段とは違った難しさはありましたか?

斎藤 自社で設計した物件であれば、施工的な納まりなどを考えデザインを適宜調整していくことも可能ですが、今回のようなケースでは設計者が考えたデザインありきであり、それを正確に具現化することが重要となるため、その点での難しさはありました。

また、今回特徴的だったのは、ロフトワーク様やアクソノメトリック様以外にも、展示什器の設計を担当する会社、エントランスのモニュメントを設計する会社、B工事の業者、音響機器を設置する業者など、関わる会社数が非常に多かったことです。その数は通常の工事と比べ3倍近いイメージで、かつ、そうした業者の方々がそれぞれ異なる発注元から仕事を請け負っていている状況でした。船場は施工会社として各業者様のハブとなり、様々意見を取りまとめながら動かなければいけない立場であり、その舵取りにも難しさがありました。

特徴的な意匠の具現化にBIMを活用

——今回の案件は帯状のモチーフが非常に特徴的なデザインでした。具現化するうえで難しさはあったでしょうか?

斎藤 帯状のモチーフにはスチールを使用しています。最初はアルミで軽量化を図ろうとしたのですが、アルミは溶接が難しく、帯状のモチーフの曲面をきれいに仕上げられないのでは、という意見が上がりました。帯状のモチーフは天井から吊り下げる構造だったため、スチールの場合は重量の懸念もありましたが、アクソノメトリック様の曲面の仕上がりへのこだわりもあり、最終的にはスチールを選択しました。

また、立体的な形状を具現化するのに有効だったのがBIM*です。現在は社内にBIMを推進するチームがあり、社内でいろいろな講習をおこなっていますが、この案件が立ち上がった当時はBIMを使えるスタッフがまだ社内に多くはいませんでした。担当者を選定する際にパースを見た当時の私の上司が「これはBIMを使わなければ具現化できないだろう」と考え、当時ある程度BIMを使えていた私に声をかけてくれたのだと思います。

*BIM…Building Information Modelingの略。コンピューター上で作成した空間のデジタルモデルの形状情報に加え、部材の仕様やコスト等の属性情報を追加したデータベースを、企画・設計・施工・維持管理までの一連のプロセスで情報活用を行うワークフロー。

BIMの概念図
BIMについて詳しくはこちら

——斎藤さんはそれまでもデザイン提案などでよくBIMを使っていたのでしょうか?

斎藤 仕上げや形状の合意形成においてよく使っていました。今回のように施工の段階でBIMを使うことはありませんでしたが、今回は曲線の造作をどう作るかが大きな課題だったため、BIMは必須だったと思います。

——具体的にはどのようにBIM活用したのでしょうか。

斎藤 先方からいただいた全体の形状を記した2Dの平面図と展開図および3DデータをBIMで検証し、構造や形状、寸法をすべて確認しながら進めました。実際の納まりに関しては、3Dデータから読み込んだ内容をもとに自分で平面図を書き、実際に出来上がるものに狂いが出ないよう、BIM上で先方の確認と合意を取りながら作業を進めました。平面展開だけだとなかなかイメージしにくい現場でしたが、BIMがあることでわかりやすくなりました。最終的に1ヵ所だけ歪みが出てしまいましたが、それ以外に大きなトラブルなく施工できたのは、BIMを活用して一つずつ課題を整理できたからだと思います。

BIMデータを活用した計画段階の鳥瞰図

現場での密なコミュニケーションでピンチを回避

——現場担当として鈴木さんはどのタイミングから物件に関わり始めましたか?

鈴木 着工6ヵ月ぐらい前のタイミングで初めてミーティングに参加しました。正直、最初はどうやって作れば良いのか見当がつきませんでした。仮に図面通りに施工したとしても、帯状のモチーフを構成するパーツがぴったりはまるとは限りませんし、溶接の過程でどこか一ヵ所でも歪みが生じれば、うまくはまらないことも考えられます。でも、それがうまくいったんです。 斎藤さんが言ったように、合わなかったのはたった1ヵ所。ただ、その1ヵ所が大変で、最初は「もう無理だ、直しようがない」と思いました。直すとしたらパーツを作り直すしかない。しかし、パーツの形状を変えると曲率が変わってジョイント部分が合わなくなる可能性がある。一度はアクソノメトリック様に正直に謝りました。しかし、デザイン的には重要な部分でなんとかしてほしいと。かたや、週明けには次の工程に入らなければならない。解決策が見いだせないまま金曜の夜に現場行ってみんなで話し合っていたところ、たまたま金物協力会社の社長さんがいらして「しょうがねえ、切るか!」と一声いただき、吊られた状態のままのパーツをその場で切断して修正することになりました。あの時が、この物件の制作における最大のピンチでした。

——特殊な意匠の施工を歪み1ヵ所で完成できた要因はどこにあったと思いますか?

鈴木 現場のスタッフの納品意識・品質意識の高さ、協力会社の技術の高さ、そして何より、現場での密なコミュニケーションだと思います。現場とメールでやりとりをするよりも、実際に現場に足を運んで1分でも2分でも話をして、お互いの温度感を合わせるようにしました。その時間がなければ、うまくいっていなかったかもしれません。現場に関わっていた全員のおかげで完成できたと思っています。

斎藤 問題が大きくなる前、まだ芽が小さいうちにすべて潰していく感じでしたね。確かにそれがうまくいった一因だと思います。大きくズレてから修正するのは大変ですが、そうなる前なら修正の余地はありますから。

上野 竣工後に現地へ足を運んだ際に、自分の目で見ても、どこが継ぎ目かまったくわからないんです。三井化学様も驚いていました。

鈴木 もし今現地に行ったら、私もわからないかも知れないです(笑)。

複雑化・高度化するデザインへの対応力を示せた

——今回の案件を踏まえ、船場の施工の魅力はどんなところにあると感じていますか?

斎藤  きれいに、丁寧に施工できることは当然ですが、何か問題あったときに丁寧にその課題を潰し、誠実にリスクを回避していく力があるところではないでしょうか。

上野 今回設計デザインを担当したアクソノメトリック様から、非常にやりやすかったと言っていただけました。また、アクソノメトリック様からのお言葉で印象に残ってるのが、「教えてもらうことがあった」というお話です。さきほど鈴木さんが「正直に状況を伝えてお詫びをした」と言っていましたが、都合の悪いことを隠したりせず、正直に伝え改善を図ったことを評価していただいた言葉だと思います。施工状況を汲まなく正直に伝えることで、何か新たな発見につながることがあったのではないでしょうか。

鈴木 チームワークが当社の施工の一番の魅力ではないかと思います。船場には得意分野が異なる多くの協力会社がおり、案件に合わせて最適な布陣を組むことができます。今回の案件でも、それがうまくはまったことがプロジェクトの成功につながったと思います。

——この成功を今後の案件にどう活かしていきたいと考えていますか?

上野 AIによるサービスの発展などを受け、これからの空間デザインはより複雑かつ実現難易度の高いものが一層増えてくると考えています。今回の成功は、そうしたデザインにも対応できる力が船場にあることを示すことにつながるはずです。複雑かつダイナミックな案件も確実に具現化する方法を持つ会社として、今後はより一層社外のデザイナーさんやクリエイターさんとも連携していきたいと思っています。

斎藤 近年、当社が受注する案件は、短期間で回していくような仕事から長いスパンをかけて手掛ける大きなプロジェクトへとシフトしてきています。それを踏まえると、今回のような多くの業者様が参画するプロジェクトの推進の仕方を経験できたことは、次のフェーズへステップアップする一つの礎となったのではないかと思います。

鈴木 案件の規模に加えて、手掛ける案件の内容も変わってきています。これまでは商業領域がメインだったところ、最近では今回のようなオフィスなどの案件も増えています。しかし、オフィスはそう頻繁に移転や改装があるわけではありませんので、これからは施主だけでなく、プロジェクトマネージャーや設計者デザイン会社に船場のファンを増やしていく取り組みが必要だと思っています。

User Voice / お客様の声

三井化学株式会社
経営企画部 共創推進室 室長 松浦 陽様

卓越した施工技術、皆さまの熱意とご尽力により、複雑なデザインを見事に具現化し、素晴らしい空間を実現していただきました事を心より感謝申し上げます。
印象的な帯のモチーフが空間全体を巡るデザインは大変インパクトがあり、私も初めて出来上がった姿を見た際は、想像を超えた素晴らしさに、驚きにも似た感動を覚えました。来場されたお客様から感嘆の声が多く聞かれ、大変嬉しく思っています。

axonometric株式会社
代表 佐々木 慧様

「こんな空間・形を考えているんだけど、どうやったら作れるだろう?当然、予算内で、、」船場さんには何度このような相談をしたことか。こちらから無茶ばかりお願いするので、いつ怒られるだろうとヒヤヒヤしていましたが、あくまでも真摯に、熱心に対応していただきました。船場チームの皆さんには頭が上がりません。すごく良いコラボレーションができたからこそ、このような面白い空間が実現できたと思っています。


Creation Palette YAE®

三井化学株式会社が社会課題視点に立脚したビジネスモデルへの転換を加速することを目的に、本社機能を置く東京ミッドタウン八重洲内に2024年10月に開設した共創空間。
この場所で、社内外の様々なバックグラウンドを持つ人々が接点を作り、交流することでアイデアやビジネス、パートナーシップの構築を行います。
訪れる皆様に合わせて、共創のヒントになるような技術や素材、取り組みを知っていただける展示コンテンツを用意しています。

>公式Webサイト:https://jp.mitsuichemicals.com/jp/special/yae/


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